国村さんが「現代の名工」に ハンマー1本で新幹線の顔 打ち出し板金で卓越した技能
2008年11月11日
下松市東海岸通りの山下工業所(山下清登社長)の第一工場長、国村次郎さん(63)=周南市大河内=が厚生労働省の卓越した技能者賞で“現代の名工”に認定された。同賞は毎年、各分野の技能の第1人者を認定しているもの。板金分野の県内の受賞は初めて。
山下工業所は職人がハンマー一本で金属板から新幹線の優美な先頭の曲線を打ち出し、台湾や韓国の特急やモノレールも引き受けている。
国村さんは山口市出身で旧県立総合職業訓練所板金科で学び、1962年(S37)に就職した会社で板金のリーダーだった山下社長と出会った。
翌年、山下社長が独立して山下工業所の前身、山下組を設立したため板金工として入社。ハンマーを振る先輩たちを見て「これは無理」と思ったが、若い仲間に囲まれて続けられたという。
新幹線の製作には100系から本格的に関わり、次々に新しいデザインになる新幹線の顔を形にしてきた。77年(S52)にはリニアモーターカー製作を請け負い、反発性が強く高度な打ち出し技術が必要なジュラルミン素材の構体も完成させた。
思い出が深い新幹線は500系で、以前の新幹線より先端が3倍近く長い先頭車両が「斬新でかっこよかった」と言う。
平らな金属板を叩いているとハンマーで正確に叩ける面は1点になる。右手で叩きながら左手はその1点にハンマーが当たるように板を動かす。
構体は作業しやすい大きさの金属板を打ち出したあと溶接するが、簡単な部分でも3年、設計図を見て最も効率的に作業できるよう各パーツのイメージを描けるまでは10年かかるという。
国村さんはこれまで下松市産業技術振興表彰奨励賞、創意工夫功労者賞、第2回ものづくり日本大賞特別賞を受け、7月にはNHKテレビ「プロフェッショナル」でも紹介された。
今回の受賞には「名誉なことだが1人の力ではない。いい社長に出会い、頑張ってきてよかった」と話す。
現在、部下は8人いるが、最も若い人も34歳で「打ち出し板金は教えるのに時間がかかる。これからは若い人を育てたい」と意欲を燃やし、来春は田布施工高から十代が入社予定だという。
- [ 出典 ]
- 日刊新周南 2008年11月11日